水上 優(みずかみ ゆたか)氏

1970年     福岡県生まれ
1992年     九州大学建築学科卒業
1998年     京都大学大学院修士課程修了
1998年~2001年  日本学術振興会特別研究員
2004年     京都大学大学院博士課程所定研究指導認定退学
2014年     福山大学工学部建築学科教授
2014年10月   兵庫県立大学環境人間学部環境人間学科准教授
2020年     兵庫県立大学環境人間学部環境人間学科教授

 

●研究概要●
学部生時代のアメリカ旅行で、私はライトの数々の作品に出会い、その空間の力に強く惹きつけられました。そこからスタートした私のライト研究の根本テーマは、ライトの建築空間を成立させているかれのあり方への問いです。なぜかれはこのような建築を作りえたのか、かれはいったい何をしようとしていたのか、ということです。

そのテーマに近づくために、私はすこし遠回りをして、かれの「ことば」に注目しています。ライトは生涯に400以上の建築作品を建てた「多作の建築家」として知られていますが、同時に20冊近くの著書があり、雑誌掲載論文や講演原稿等を含めると実に多くの言葉を遺しています。

そこで、「有機的建築」についてライト自身がどのように捉えているのかを、直接ライトの言葉に聞き取ろうというわけです。かれの言葉を丁寧に見ていくことで、建築についてのかれの思索が単なる独りよがりの思いつきではなく、たとえばエマソンやソロー、ホイットマンといったアメリカの詩人たちの「自然観」を引き継いだ歴史的なものであることが分かってきます。
ライトが晩年によく引用する古代ウェールズの格言を紹介しましょう。

『天才とは、
自然を見る目を持つひとであり、
自然を感じとる心を持つひとであり、
自然に倣う勇気を持つひとである。』

ここで言われる天才にかれが自らを重ねていることは言うまでもありません。ライトの思索は自然と人間とのかかわり合いのあり方を問う思索であり、「有機的建築」はその問いから生まれた建築であると言えるのです。


著書

『花美術館 vol.59 特集フランク・ロイド・ライト 』(蒼海出版), 2018
『建築制作論の研究 』<共著>(中央公論美術出版),2016
『フランク・ロイド・ライトの建築思想』(中央公論美術出版),2013
『現代建築家20人が語る いま,建築にできること』<翻訳>(丸善),2010
『フランク・ロイド・ライト建築ガイドブック』<翻訳>(丸善),2008
『建築論事典』<共著>(彰国社),2008
『フランク・ロイド・ライトのルーツ』<共著>(エクスナレッジ),2007
『フランク・ロイド・ライトと武田五一』<共著>(ふくやま美術館),2007

論文

Mizukami Yutaka, et al. “Potentials of VR for preservation and practical use of buildings
― Through utilization analyses of some resources of the Imperial Hotel designed by FLW,”
The 16th International Docomomo Conference, pp.754-759, 2021.8
『「オークパークの自邸」型住宅の変容について F.L.ライトの住宅作品における多様性生成システムの研究 』
兵庫県立大学環境人間学部研究報告,22,pp.97-106,2020.3
『「チャーンリー」型住宅の変容について F.L.ライトの住宅作品における多様性生成システムの研究 』
兵庫県立大学環境人間学部研究報告,21,pp.149-160,2019.3
『「ヒコックス」型住宅の変容について F.L.ライトの住宅作品における多様性生成システムの研究 』
日本建築学会計画系論文集,746,pp.775-781,2018.4
『プレイリー・ハウスの生成システム フランク・ロイド・ライトの思索と制作』
日本建築学会計画系論文集,700,pp.1449-1457,2014.6
『F. L. ライトの都市思想における「ブロードエーカー・シティ」のフォーム』
日本建築学会計画系論文集,581,pp.211-218,2004.7
『F. L. ライトの建築思想における「第3次元」の概念』
日本建築学会計画系論文集,571,pp.143-148,2003.9
『F.L.ライトの建築思想における「成長」の概念』
日本建築学会計画系論文集,563,pp.313-320,2003.1
『F.L.ライトの建築思想におけるwithin (内)の概念 後期3著作をとおして』
日本建築学会計画系論文集,533,pp.251-258,2000.7

上部へスクロール