1921(大正10)年にライトのもとを離れて日本で設計事務所を開設し、その後はモダニズム建築の作品を多く残すと共に、日本の建築家に多大な影響を与えました。
現在でも東京女子大学のチャペルや校舎、旧イタリア大使館別荘(日光)、聖パウロ教会(軽井沢)など、日本各地に多くの作品が残っています。
なぜこのブログで突然レーモンドの紹介をするかといいますと、もちろんライトとのつながりもありますが、実はもう一つ大きなつながりがあったのです。
それは、当館を所有する株式会社淀川製鋼所の旧本社ビルが、レーモンド設計事務所の設計だったということです。このビルは1952(昭和27)年に竣工しましたが、1972(昭和47)年に本社が移転した後、建て替えられて現在は「ヨドコウ第二ビル」となっています。
どのような経緯で設計を依頼したかは定かでありませんが、淀川製鋼所とライトや建築界との不思議なご縁を感じます。
この旧本社ビルは、シンプルかつ機能的なデザインで、当時はまさしく”モダニズム建築の先端”といえる作品であったようです。
建築家の方などがバスで見学に来られたり、竣工した年に建築雑誌に写真や図面入りで紹介されていたりしていたことからも、注目された建築であったことがお分かりいただけるかと思います。
もしこの建物が残っていたら、名建築家が残した「有機的建築」と「モダニズム建築」という、まったく異なるデザインの建物を巡るツアーが開催できたかもしれませんね。会社としては、維持・管理が大変だったとは思いますが…。
このような作品の記録を公開する事は近代建築史の観点からも意義のある事ではないかと考え、レーモンド設計事務所様にご相談したところ、快く貴重な写真や図面をご提供いただき、この度、当ブログで詳しくご紹介できることになりました。淀川製鋼所所有の写真とあわせてご覧ください。
この貴重な記録が、皆様のご参考になれば幸いです。
※各写真をクリックすると別ウィンドウで大きな画像が開きます。
※掲載している図面は、お借りした図面をもとに淀川製鋼所で書き起こしたものです。
いかがでしたでしょうか。
もしレーモンドに興味を持たれましたら、是非足を運んでいただきたいのが東京・代々木にあるレーモンド設計事務所様のメモリアルルームです。
レーモンドは1954(昭和29)年から1974(昭和49)年の間、自宅兼事務所を麻布・笄(こうがい)町、現在の西麻布3丁目に構えていました。レーモンドの離日後、1978(昭和53)年に事務所が代々木へと移転しましたが、その際にリビングルーム部分を事務所の5階へ移築し、以降メモリアルルームとして保存されています。
こちらではレーモンドが実際に使用していたデスクや家具、レーモンドの妻であるノエミ・レーモンドがデザインした家具などもご覧になれます。また、事務所の一階に図面や写真を展示しているギャラリーが併設されています。
メモリアルルームは毎月第二金曜日の14~15時に一般公開されています。
※要事前申し込み
詳細はレーモンド設計事務所様のホームページをご覧ください。
もう一つレーモンドの作品をご紹介します。
横浜の元町公園の中にある、1925~1926(大正14~15)年竣工のエリスマン邸です。
この建物はレーモンドが日本で設計事務所を開設して間もない頃の作品で、水平を強調する軒や館内の装飾などに、まだライトの影響が見られます。
入館は無料で、館内では定期的に絵本の読み聞かせやピアノのコンサートが行われています。喫茶コーナーもありますので、ゆっくりできます。
横浜の山手には他にもたくさんの洋館があり、近くに観光スポットも多く中華街にも歩いて行ける距離ですので、一度訪れてみてはいかがでしょうか。
写真・図面・解説文 / ㈱淀川製鋼所