ヨドコウ迎賓館館長が行く アメリカ東部、F.L.ライト建築を巡る旅[8]


ヨドコウ迎賓館館長 岩井 忠之

2015年10月より副館長を務め、2016年4月より現職。2017年6月にアメリカのライト作品を巡る「フランク・ロイド・ライトツアーイースト」に参加。


6日目 ~ライズリー邸~
いよいよ見学は最後の日になりました。この日はニューヨークで3カ所をまわります。

出発の前に、ホテルがセントラルパークの近くでしたので、この日も早起きをして散歩に行きました。
広大な公園のまわりに高層ビルが立ち並び、ドラマや映画のように外周をジョギングしている人を沢山見かけました。
映画の撮影スポットをまわるウォーキングツアーもあるそうで
す。

セントラルパークより
マンハッタンからバスで1時間ほど移動して、ニューヨーク州プレザントビル(Pleasantville)の森の中に入っていくと住宅群があります。移動中は、こんな森の中に住宅群があるとは思わず、驚きました。

約100エーカー(約4,047㎡)の敷地に、ライトとその弟子たちの設計したユーソニアンスタイルの住宅があり、ライトはここで3件設計しています。
その中の1件が、これから見学するライズリー邸です。

バスを降りて歩いて向かうと、木立の中に建物の姿が見え隠れしてきます。まさしく周囲の環境に溶け込んでいました。

木立の中に見える外観
屋根からのびるカーポートが印象的です。
印象的なカーポート
柱と屋根の接合部です。施工が大変そうですね。
柱と屋根の接合部
この建物は1951年竣工で、今でもオーナーのライズリーさんが御夫婦で住んでいらっしゃいます。

ライズリーさんは、直接ライトにこの家の設計を依頼されたそうです。ライトは大変親切で“傲慢で風変りな人”という一般的なイメージとは違っていたと仰っていました。
予算が少なかったため、最初はダイニングとリビングに寝室一つというコンパクトな造りで設計され、後に子供部屋が増築されました。

木と石を使った建物が地面につきささって行く様で、自然と建物の一体感を感じました。
地面に突き刺さるよう
リビングには広い窓が並び、風にそよぐ木立がよく見えます。
リビングから外を眺める
ダイニングテーブルは変わった形をしています。
この建物は、天上、床、照明、家具などが三角形を基本にひし形や六角形を使ってデザインされ、色はチェロキーレッドで統一されていました。
ダイニングテーブル
洗面所の一つは、シンクのみならず周りのタイルまで六角形のデザインです。
六角形で構成されたシンク
ドアの掛け金はヨドコウ迎賓館とよく似ていました。
全体的なデザインは異なるものの部分的に似ているところが結構あります。
ライズリー邸の金具
ヨドコウ迎賓館の金具
ライズリーさんは、ヨドコウ迎賓館の竣工した年と同じ1924年生まれだそうですので、今年で93歳になられます。かくしゃくとされていて声にもハリがあり、とてもそんなご高齢とは思えませんでした。

実際に生活をされているお宅を公開するのは大変だと思いますが、とても貴重な経験となり、生活があっての住宅ということを改めて実感しました。
ヨドコウ迎賓館でも、生活感を感じていただけるような活用方法を検討していきたいと思います。

この記事は2018年1月10日にヨドコウ迎賓館のブログに掲載されたものです。
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