新たに見つかった和の趣向とは?
ヨドコウ迎賓館を設計したライトは、日本の建築や美術から多くのヒントを得たといわれています。外観からは洋風そのもののように思える館内にも、和の趣向を感じさせる箇所がいくつかあります。そのなかから、平成7年より3年余にわたる震災修復工事を通して、新たに発見された事例をクローズアップ。果たしてライトのオリジナルなのか?読者の皆様と一緒に想像したり、謎解きを楽しんでみたいと思います。
鉄筋コンクリート造なのに土壁が…
館内3階には、3室続きになっている畳敷きの和室があります。なにもこれだけでは、格別珍しくもありません。ところが、建物の構造からして、普通コンクリートが使われるはずのところに、土壁(和室西側=廊下側の一部)がとり入れてあったのです。土壁というのは、竹で編んだ枠組みに土を塗っていく、日本の木造建築の手法。なぜ、わざわざ…?
実はこの和室、当初のライトの設計には盛り込まれていなかったのですが、施主山邑家の強い要望により、ライトの弟子である遠藤新や南信の配慮で実現したとされています。土壁の場合、比較的薄くても強度を確保でき、そのぶん室内も広くとれます。さらに、畳などを湿気から守る役割も兼ね備えていたのかもしれません。
実はこの和室、当初のライトの設計には盛り込まれていなかったのですが、施主山邑家の強い要望により、ライトの弟子である遠藤新や南信の配慮で実現したとされています。土壁の場合、比較的薄くても強度を確保でき、そのぶん室内も広くとれます。さらに、畳などを湿気から守る役割も兼ね備えていたのかもしれません。
壁のオリジナル色に加え、漆塗りも出現
ところで、震災前までは、室内の壁は薄い緑色で塗られていました。しかし、被災によって、この色の下から淡い茶色がオリジナル色として出てきたので、もとの色に塗り替えて復元しました。なんとなく素焼きの色調に似ているような気もします。
また、4階にあがる階段の踊り場の壁には、漆を塗った形跡がありました。漆といえば、日本の伝統的塗料ですが、建材に使われるのは襖の枠などに限られます。つややかな漆黒の色に魅せられたのか、はたまた? そして、いったい誰が? いまだ謎のままです。
フラワースポット 『一風変わった、ガーデニングスペース』
いまガーデニングが大流行。庭やベランダで花などを育てていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。実は、ヨドコウ迎賓館にも、ガーデニングに関連の深いスポットがあるのです。ひとつは、玄関東側面にあるフラワーポットの跡。このフラワーポット、塀の上にのせてあるので、ちょっと見たところ花壇とは思えないのですが、4階のバルコニーから見おろすと、なるほど納得。石囲いの中に、土が入れてあるのがわかります(写真・照明部)。まさに空中花壇といったイメージで、お客様への趣向をこらしたおもてなしが偲ばれます。また、バルコニー内にもプランターの跡が残っており、ガーデンパーティーを開きながら、季節の花を楽しんでいた風情がうかがえます。
※本稿はヨドコウ迎賓館の保存修復を監理されている(財)建築研究会の平田文孝先生のご教示をいただき淀川製鋼所が作成したものです。